卒業式 校長式辞


 式辞
 厳しい冬の寒さも和らいで、木々のつぼみも膨らみを増し、今年も希望に満ちた春が巡って参りました。
本日この佳き日に、本校PTA会長 小林健郎様をはじめ多くのご来賓並びに保護者の皆さまのご臨席を
賜り、埼玉県立熊谷女子高等学校第67回卒業証書授与式を盛大に挙行できますことを、心から感謝
申し上げます。
 ただ今、卒業証書を授与いたしました360名の卒業生の皆さん、御卒業おめでとうございます。皆さんは、
3年前、桜の花に迎えられ夢と希望を胸に熊谷女子高校に入学しました。以来、熊女の「三張る」の精神の下、
照りつける夏の太陽の下で汗して鍛え、水が澄み天高くなる秋に学び、木枯らしが吹き荒ぶ冬の厳しさに耐え、
心と体と学力、そして人間力を育んできました。入学時に比べると一回りも二回りも大きく立派に成長し、
これからはそれぞれが選んだ道に進むことになります。この意義深い門出に当たり、心から幸多かれと
お祈りいたします。また、この間、陰になり日向になって、お子様を育み支えてこられた保護者の皆様にも
改めてお慶びを申し上げます。
 さて、本日の卒業式は、皆さんの長い人生の大切な節目であり、思いを新たに次のステップへと進む旅立ちの日
でもあります。しかし、4月から皆さんが踏み出そうとしている社会は決して平坦な道だけではありません。近年は
社会の仕組みや価値観が一段と複雑多様化し、日本国内だけでなく地球規模で困難な課題が山積しています。
このような中で、皆さんには、21世紀を心豊かで平和な住みよい社会へと変えていく使命が託されているのです。
この変化の激しい社会に旅立つ皆さんにはなむけの言葉として三つのことをお話しします。
 まず第一に、皆さん一人一人が「大きな夢や高い志を持って欲しい」ということで、埼玉県の三大偉人で日本
最初の公認女性医師である荻野吟子の生涯を紹介したいと思います。
 吟子女史は、1851年・嘉永4年、現在の熊谷市妻沼、当時の俵瀬村に生まれ、18歳の時に結婚しました。
しかし、不慮の病を理由に離婚することになってしまいます。そして、その時の男性医師による病気治療の体験から、
女性医師の必要性を痛感し、自らが医師になることを決意します。当時は、女性が医師になることなど考えられない
時代で、医術開業試験の受験は認められておらず、女性が医師になる道は閉ざされていました。しかし、吟子女史は、
制度や慣習といった目の前に立ちはだかる大きな壁に対して、強い信念とたゆまぬ努力で立ち向かいます。そして、
多くの師や友の支援・協力もあり、国の医術開業試験規則が改正されることになります。そして、明治18年、35歳の
時に、見事、医術開業試験に女性として初めて合格し、日本で最初の女性医師となりました。その後、東京の湯島など
で医院を開業し、多くの人々の治療に力を尽くすとともに、女性の地位向上や衛生知識の普及にも大きく貢献しました。
吟子女史が愛唱した「人その友の為に 己の命をすつるは 之より大なる愛はなし」という聖句のとおり、人のために
献身的に自らの命を燃やし続けた一生でした。卒業生の皆さんも、社会の大きな壁に立ち向かい道を切り拓き、生涯、
人のために生きた吟子女史の生き方を学んで欲しいと思います。
 二番目は、「思いやりの心を持って欲しい」ということです。中国の思想家である孔子と弟子の子貢のやりとりの一節
に「子貢問うて曰く、一言にして以て終身これを行うべき者ありや。」子曰わく、「其れ恕か。己の欲せざる所、人に施す
ことなかれ。」という会話があります。意味としては、「人が生涯貫き通すべきことを一文字で表すとしたら何でしょうか。」
という質問に対して、孔子が「それは恕である。つまり、相手の身になって思い・行動すること。自分のいやだと思うような
ことを人にしてはいけない。」と答えたというものです。私たちは、日々の生活の中で色々と辛い思いをすることが
あります。しかし、気づかないうちに自分も同じようなことを人に対して言ってしまったり、やってしまったりすることは
ないでしょうか。社会がどのように変化しても、世の中は人と人とが助け合い、支えあって成り立っています。「己の
欲せざる所、人に施すことなかれ。」いつも思いやりの心をもって人生を歩んでいって欲しいと思います。
 そして、三つ目は「人との出会いを大切にして欲しい」ということです。熊谷女子高校という学舎で共に学んだ三年間。
ここで築かれた人と人との絆は間違いなくかけがいのない宝物です。生涯にわたり大切にしていただきたいと思います。
そして、これからの人生には教科書はありません。皆さんが出会う人が教科書となり先生となります。先ほどお話しした
「大きな夢や高い志」と「思いやりの心を持ち」多くの人に出会って、多くのことを学び、皆さんが大きく飛躍・発展される
ことを心からお祈りいたします。
 最後になりましたが、保護者の皆様にお礼を申し上げます。この三年間、御家庭におかれましては、ときには厳しく、
ときには優しく、お子様を励まし支えていただき、御苦労も多かったことと存じます。それだけに、本日の喜びには
計り知れないものがあると思います。御卒業を心からお慶び申し上げますとともに、これまで学校が賜りました御理解と
御協力に深く感謝申し上げる次第でございます。
 結びに、御来賓の皆様をはじめ保護者の皆様には、今後とも熊谷女子高校への絶大なる御支援・御協力をお願い
申し上げますとともに、卒業生の皆さんの洋々たる前途に幸多かれと祈念し式辞といたします。
                                                
         平成27年3月14日

                              埼玉県立熊谷女子高等学校
                                   校長 久 保 正 美