ご卒業おめでとうございます! 第77回卒業証書授与式・式辞
【校長式辞】
鳥語花香の今日の佳き日、本校PTA会長 様、本校同窓会さくら会会長 様 をはじめ、多くのご来賓の皆様、そして保護者の皆様のご臨席を賜り、かくも盛大に「埼玉県立熊谷女子高等学校 第七十七回卒業証書授与式」を挙行できますことは、本校にとりまして望外の喜びであります。
ただ今、卒業証書を授与いたしました三百九名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんがこの三か年の間にたくさんの喜びと楽しさに溢れた時間を過ごしながら、また同時に様々な試練や困難を乗り越えて、今こうして卒業にたどり着いたことは、皆さんの生涯のかけがえのない財産であり、手にした証書は努力の証であります。
これまでの皆さんの強い意志と弛まぬ努力に敬意を表します。
振り返れば皆さんが入学した令和四年は、改正民法の施行によって成人年齢が一八歳に引き下げられたことや、ロシアのウクライナ侵攻が始まった年でした。成人年齢の引き下げにより、皆さんには選挙権があり、ご両親の親権に服さなくなりました。親の同意を得ずとも、自分の意志で契約を結ぶことができるようになったわけですが、これは皆さんの自己決定(decision-making)を尊重するとともに、その積極的な社会参加を促し、社会を活力あるものにするという大きな意義があります。
だからこそ、世界各地で起きている紛争や対立などについても、対岸の火事として傍観するのではなく、自分事として考えてほしい。科学の技術革新はそのまま兵器開発の歴史でもありました。科学技術はいわば「プロメテウスの火」なのであって、プロメテウスが与えられた罰は、私たち人類に背負わされたものでもあるのです。
驚くべきスピードで発展・進化していく情報化社会において、人工知能や生成AIが人間の持つ能力を凌駕せんとする今こそ、一人の大人として、人類社会の幸福に貢献できる、そんな人物であってほしいと思っています。
さて、今日は熊女で過ごす最後の日です。
この先の不透明で難しい時代を逞しく、そして、しなやかに生きていく上で、心に留めておいてほしいことを二つお話しさせていただきます。
一つ目は「夢を追い続け、諦めず挑戦し続けること」です。
「これは失敗ではない。うまくいかない一万とおりの方法を発見したのだ。」
これは皆さんもよく知るトマス・エジソンの言葉です。エジソンは電球を実用化する際、実に二千個ものフィラメントを試し、ようやく低価格で効率的に生産できる電球を考案しました。気の遠くなるような努力を支えていたのは、夢を諦めない彼の熱意や情熱でした。エジソンは自分の夢を追い続け、諦めずに挑戦するという意味で、非凡の才能の持ち主だったのです。
失敗とは人生を豊かにするスパイスのようなものだと云う人がいます。失敗や挫折のない人生なんてつまらない、人としての魅力もない。失敗や挫折の経験を素直に語れる正直さ、そこから諦めずに行動し、成長し続けたサクセスストーリー、そういうところに人は惹かれるのだ、と。
皆さんのこの先の人生にも、失敗や挫折が待ち受けているかもしれません。しかし、そこから学び、己を磨く機会と前向きに捉えることのできる、何度でも立ち上がれる、強いレジリエンスを持った人であってほしいのです。
二つ目は「心優しい人であること」です。
熊女の校歌には「やさしき心養はん」というフレーズがあります。優しい心を育むことは本校の重要なミッションでもありますが、東京ディズニーランドでの心温まる接客エピソードにこんなお話があるのをご存じでしょうか。
園内のレストランに二人でやって来た若い夫妻が「お子様ランチ」を注文しました。キャストである青年はマニュアルどおり断ろうとしますが、「亡くなった娘のために注文したい」との返事。聞けば、娘さんは生まれつき身体が弱く一歳の誕生日を待たず神様のもとに召されてしまったのだそうです。話を聞いた青年は「そうですか、ではご用意いたします」と応じると、「ご家族の皆さま、どうぞこちらへ」と二人を四人席の家族テーブルに移動させ、子供用の椅子を一つ運んできました。そして、「お子様はこちらに」とその小さな椅子に導いたのです。
しばらくして、運ばれてきたのは三人分のお子様ランチでした。青年は「ご家族でゆっくりお楽しみください」と挨拶してその場を立ち去りました。二人は失われた子供との日々を噛みしめながら、お子様ランチを食べたということです。
私は、人間にとって「諦めずに努力を続けること」こそ、その人の力を最大限に発揮できる原動力だと思っています。そして、人間だけが持つ「優しさや思いやりの心」こそ、争いごとや不幸から人々を解放する唯一の方法だと思っています。一人一人が夢を諦めずに努力を重ね、優しい気持ちを失わず、相手の立場に立って行動できさえすれば、この世の中は素晴らしいものになると信じているからです。
熊女を巣立ち、人生という大海原に漕ぎだしていく皆さん、皆さんの心のうちにある信念、自分の心の声を信じて、皆さんの人生を正々堂々と歩いて行ってください。
保護者の皆様におかれましては、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。
本校入学時と比べて立派に成長した卒業生の皆さんの姿を、職員一同とても頼もしく思っております。そして、この卒業を機に、さらなる大人としての成長を遂げてくれるものと期待しております。お子様の在学中、本校教育活動への格別のご支援とご協力をいただきましたことに、改めて衷心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
結びに、第七十七回卒業生の皆さんが、素晴らしい人生を歩み、未知なる地平に勇敢に旅立つことを心から願い、皆さんと同様、熊女愛がとまらない校長栗藤からの式辞といたします。
令和七年三月十四日
埼玉県立熊谷女子高等学校長 栗藤 義明
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