卒業証書授与式 校長式辞
令和五年度卒業式 校長式辞
桜の芽も色づき、校庭に吹く風に春の柔らかさを感じる、今日のよき日、御来賓の皆様、保護者の皆様に御出席いただき「令和五年度第七十六回卒業証書授与式」を挙行できますことは、本校にとっておおきな喜びでございます。これまで支えていただいた皆様に心より感謝申し上げます。
ただいま、三百十一名の皆さんに卒業証書を授与しました。本校に入学以来、不断の努力を重ね、所定の課程を修めた卒業生の皆さんに敬意を表し、教職員を代表して御祝いを申し上げます。
熊女での三年間を振り返り、いま、皆さんは何を思い、何を感じているでしょうか。三年前、上級生のパワーに圧倒されながら、熊女生活に慣れようと必死になっていた一年生。先輩を真似ながら、それぞれの組織の中心となり活躍した二年生。そして、最上級生として自覚と誇りをもって後輩を指導した三年生。語りつくせない、かけがえのない三年間であったことでしょう。
明日からは、新しい世界に一歩踏み出していきます。旅立つ皆さんの姿を見届けることは、大変うれしくもあり、また少し寂しくもあります。万感の思いを込めて卒業生へ餞の言葉を送りたいと思います。
それは、「教学半」という言葉です。漢字で「教えるの『教』、学ぶの『学』、半分の『半』」と書き、「教うるは学ぶの半ばなり」と読みます。この言葉は儒教において経典とされる「四書五経(ししょ ごきょう)」のひとつである「書経(しょきょう)」にある言葉です。「教えることは学ぶこと」という意味だけでなく「人に何かを教えることにより、自らも新たな学びがはじまる」ということであると私は解釈しています。
卒業生の皆さんは三年間で様々な学びを積み重ねてきました。授業では先生方の講義により各教科の質の高い知識や技術を習得し、さらに、協調学習などの学びあいにより異なる意見を持っている他者と、お互いの意見を出し合いながら、新しい価値観を作り出していく過程も経験しました。部活動や委員会、学校行事では友と助け合い、時にはぶつかりあいながらも豊かな人間性を育んできました。
明日からは、国内外で活躍する三万八千人を超える本校卒業生の仲間入りをしますが、皆さんの夢はまだ先にあるはずです。大きな花のかんざしをかざすため、さらに自らを磨いてください。
今年度の四月の始業式で、私から夢の実現の話をしました。宇宙兄弟の話を覚えていますか。夢を実現しようとするとき、大きな夢の前には大きなドアがあって、行く手を塞いでいるように感じるものですが、本当はそんな大きなドアは存在しない。だから、いきなり大きなドアを開けようとするのではなく、小さなドアをひとつずつ開けていくように、一歩ずつ前に進むことが、結局は大きな夢にたどり着く唯一の方法なのだ、という話をしました。
もう一つ、大切なことを伝えました。夢を実現するためには、与えられる学びだけでは、大きな夢をつかみ取る力は身につかない。自分の学びを自らマネジメントできる力を身につけてほしいとも話しました。
大学の学び、そして一生続く人生の学びとは、まさに、周囲と協調しながら知識を深め、自分でつかみ取る学びなのです。「教学半(教うるは学ぶの半ばなり)」のことばを踏まえ、これから大学や実社会で学び続け、大きな夢をつかみ取ってください。
これから皆さんの進む道はさまざまに分かれていきます。しかし、その道は将来どこかで再び交わることがあるはずです。そのとき、熊女の卒業生として誇れる出会いをしていただけることを心より願っています。
鈴懸の木から羽ばたき行く皆さんに、私が高校時代にサイエンスに興味を持ち、相対性理論の中にドラえもんのタイムマシンの可能性にときめいて、理系に進むきっかけを作ってくれた科学者の言葉を添えて、式辞とします。
Learn from yesterday, Live for today, Hope for tomorrow. The important thing is not to stop questioning.
過去から学び、今に生き、未来に希望を持て。大切なのは、問いを持ち続けることである。
アルバート・アインシュタイン
常識にとらわれず、「なぜ」という問いを持ち続け、一人ひとりの幸せな未来を切り開いていってください。御卒業おめでとうございます。
令和六年三月八日
埼玉県立熊谷女子高等学校長
佐藤 智明