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2023年7月の記事一覧

校長講話 (1学期 終業式)

 終業式にあたり、初めに土屋先生の話をします。
 日本史の土屋先生がお亡くなりになったことは皆さんも知っていることと思います。多くの生徒も葬儀に参列してくれました。日本史選択の生徒や毎日熱心に指導していただいた卓球部の生徒はとてもショックだったと思います。私たち教職員も同じ気持ちです。

 実は土屋先生は約3年半前からがんを患っていました。3年前、2020年の3月には初めの手術をしています。その時には、すでにがんの転移が見つかっていて、抗がん剤で治療を続けていました。転移が取り除けないという状態で、自分の命が長くはないと知りながら、人生をかけて取り組んできた教師という仕事を最後まで現役で全うされました。
 土屋先生は、誰よりも教師という仕事の尊さ、人を育てるという責任をもって仕事に取り組んでこられました。だからこそ、入院の直前まで部活動の大会に引率し、入院してから私と電話で話した時も、受け持っている日本史の授業をあけてしまって生徒に申し訳ないなどと、熊女のことをずっと気にしておられました。そんな土屋先生を、私は教員として、人として心から尊敬しています。

 本校にとって、土屋先生がお亡くなりになったことは大きな損失ですが、残された私たちが頑張ることが、何よりの供養になるはずです。土屋先生の熱い授業を思い出しながら、今を生きる私たちはひたむきに頑張っていきましょう。改めてご冥福をお祈りします。

 さて、今日は「命」について話をします。
 自分自身のことですが、「死」を意識した経験は2度あります。1度目は小学生の時に野球をやっていてバットが頭にあたり、頭蓋骨陥没の大きな手術をしたとき。私の両親は医師から死を覚悟するように言われたそうです。その手術をしたお医者さんに、伝えられなかったお礼を言いたくて10年ほど前に再会しました。命の恩人である先生が私に話してくれたのは、「私は外科医として、今ある命を継ぎはぎのように繋ぎとめる仕事をしてきた。君は教育という未来を創る仕事をしているのか。」と嬉しそうに話してくれました。
 2度目は南太平洋にあるバヌアツ共和国という途上国の離島で、40度近い熱が数日続いて意識がなくなりそうになっていた時。病院は首都まで飛行機で2時間くらいかかり、しかも次の便は来週まで来ないといわれ、この島で死んでしまうかもしれないと思いました。幸い、魔術師に祈祷していただき、なぜか回復しました。

 そんな途上国では、マラリアやデング熱などにかかると、免疫力のない小さな子供が死ぬとことはよくあることでした。ある時、小さな子供が亡くなり、お葬式をするための神父がいないため、代役をしたことがあります。私は信者ではないのですが、島に住んで1年半ぐらい経ち村の酋長になっていたのと、いちばん白いシャツを持っていたという理由でした。
 島では土葬するので、木の枝で長さを測って穴を掘ります。子どもの墓穴は小さく、穴を掘ったときの土の山はとても小さく、これだけしか生きられなかったのかと涙が止まらなかったことがあります。
 その島で、子供たちの将来の夢について聞いたことがあります。日本ではサッカー選手、宇宙飛行士、IT会社経営者、医師など多様な夢を答えてくれます。一方、島の子どもたちは、長老、おじいちゃんになりたいが一番多い答えでした。生きるということが大変だからこそ、長く生きている長老に対してリスペクトを持っているのだと思います。途上国の抱える課題を目の当たりにする反面、日本が無くしてしまった大切なことも感じる出来事でした。
 私が赴任するまで島には小学校までしかありませんでしたから、その先の学校に行くことや、ましてや海外に行くなどという夢は描くことさえできない環境があるのが途上国など世界の現実です。

 世界的には大学まで進学する機会を得る人は少数です。しかし。皆さんは日本で生まれ、様々な将来の夢を思い描くことができる自由がある幸運を最大限に生かして夢の実現に挑戦してください。

 国際機関で難民支援に尽力し、困難な状況にある世界の人々に寄り添い多くの命を救った緒方貞子さんの言葉を紹介します。「文化、宗教、信念が異なろうと、大切なのは苦しむ人々の命を救うこと。自分の国だけの平和はあり得ない」世界に広がる“自国優先”の姿勢や“難民への無関心”や日本が内向きになっていることを、緒方さんは晩年、深く憂いていたと言います。

 緒方さんは広く世界を見てこの言葉を語っていますが、小さな社会においても同じことだと思います。例えば学校、会社、地域などにおいても、自分だけではなく、周囲も含めて幸せな社会を作る人になってくれることを期待します。

 明日から夏休み、コツコツと実力アップして将来の夢に近づくための夏にしてください。